信じられない! 信じたくない!
いくらなんでもありえない!
キスシーンの直前に、鳥のフンが頭に直撃って!
なにその確率! どんだけレアな人生なのあたし!
う、嘘だよね!? こんなの嘘!
「お願い、誰かこれは夢だと言ってーー!」
発狂してるあたしの目の前で、門川君が大爆笑している。
桜の木の幹を手でバチバチ叩いて、涙流して大笑い。
やっぱりこれは夢だ。そうに違いない。
だって門川君がこんなに、発作寸前まで笑い転げるなんてありえないもん!
それもキスしようとした相手の頭に、フンが落下したのを見て笑い転げるなんて!
そんなヒドイことって、いくらなんでも無いよね!?
「やっぱりこれって夢だよね!?」
「あ、天内・・・きみ・・・最高に、運・・・」
「どこが最高なウンよ! 最っ低じゃないの!」
人の不幸を笑いのネタにすんなあぁーー!
怒りでぶるぶる震えるあたしを、門川君が涙を拭いながら宥めた。
「いや、これは失敬。だがウグイスのフンは貴重なんだ。酵素が豊富だから洗顔料に最適・・・」
「せっかくですけど、洗顔フォームには不自由してませんから! あたし!」
叫ぶあたしに、彼は再び腹を抱えて大爆笑。
あたしはもう腹が立つやら悲しいやらで、髪振り乱してジダンダ踏みまくった。
こんの、スグイスやろおぉぉーーー!
乙女の純情、汚しやがってぇーーー!
戻って来い! きっちりオトシマエつけんかいー!


