「浄火君だけが君の唇を知っている。そんなの許せるものか」
「・・・・・・」
「君の唇を知っていいのは、この世で僕だけなんだ」
彼の指があたしの唇をそっと撫でた。
薄い皮膚が、彼の冷たさを感じる。
あたしの心と頭がクラクラした。
この束縛。この嫉妬。
この甘さ。この喜び。
あぁ・・・眩暈、が・・・。
「答えたまえ天内君。僕との口づけは、嫌なのか?」
眩暈が・・・して・・・。
もう、あたし、あたし・・・何もかも・・・。
「好きな・・・・・・」
蚊の鳴くような、震える声で。
自分の鼓動の音を大音量で聞きながら、あたしは答えた。
「好きな男の子とのキスがイヤな女の子なんて、いないよ」
門川君の目が大きく見開かれる。
そして最高に嬉しそうに微笑むのを、あたしは頬を染めて見ていた。
門川君の唇がゆっくりと近づいてくる。
あたしはもう、何も考えずに素直に目を閉じた。
もう、いいの。ただ受け入れたいの。
彼の気持ちを。そして自分の気持ちを。
あたしの・・・・・・
ずっと夢見つづけていた、この人生最高の瞬間を。
あぁ、門川君・・・大好き・・・・・・。


