顔中の血管が破裂するかと思った。
それくらい急激に、顔に血液が集中した。
さっき急下降した血圧が、今度は急上昇している。
アクロバット飛行みたいで、こんなの心臓が耐えられない。
潰されそうなほど強く押し付けられた彼の胸から、ものすごい速度の鼓動が聞こえた。
ドッドッドッて殴りつけるように、今にも爆発してしまいそう。
いつも腹が立つほど冷静な彼の、極限の混乱ぶりが伝わってきた。
見上げる顔は、色を塗ったように真っ赤に染まっている。
でも透き通るように綺麗な目が、あたしを真剣に見ていた。
「天内君・・・」
あたしの名を呼ぶ、彼の美しい唇。
その唇が、真っ直ぐあたしに向かって降りてくる。
あたし達の唇の距離が強引に近づいた。
「・・・・・・!?」
キス、されちゃう!? ど、どうしよう!
突然のことに驚いて、あたしは大げさに全身を緊張させてしまう。
そんなあたしの態度に門川君は息を飲み、動きを止めた。
「・・・嫌か? 震えている」
「あ・・・の・・・」
「嫌なのか? でも、僕は君の拒絶を受け入れない」
至近距離で見つめ合う瞳と瞳。
あたしはもう、肩も腕も足もガチガチのゴチゴチで、石化の呪文をかけられたみたい。
心臓のドキドキは限界寸前だ。


