普通に成長して、普通に生活して。
普通に恋愛して、普通に結婚して。
普通にお母さんになって、普通に生きていく。
今ではもうあり得ない、そんな人生が・・・
ちょっとだけ、羨ましいなって。
だってあたしにとっては、そっちの人生の方がスペシャルだもん。
手に入らないと分かっているからこそ、羨ましく思う。
自分とは全く違う、手の届かない物を手にしている人に憧れる。
そういう感情って誰にでもあるよね。
「隣の芝生は青く見える、というやつだな」
「うんうん、それ。常世島の人たちもそうだよね」
自分には無い神の一族の能力。
持てないから憧れるし、持てない自分が悔しいし。
だから妬むし、恨みもする。
戌亥の浄火に対する感情も、まさにそれだった。
「神の一族も同じだよ。僕たちは常世島の人たちを、無意識に妬んでいるのさ」
「え?」
意外な言葉に、あたしは目をパチパチさせた。
「妬む? こちら側の人があちら側を?」
「そうだ。僕たちはきっと、能力を持たない彼らが羨ましいんだ」
「・・・・・・」
「僕たちは、常に死と隣り合わせで生きているから」


