神様修行はじめます! 其の四


「何をそんなに緊張しているんだ君は」


汗をかきながらゼハゼハ激しく呼吸するあたしを、門川君が呆れたように見ている。


「だってあいつ、敵じゃん!」


「だとしても、いきなりこの場で襲い掛かってはこないさ」


「隙を見せちゃダメだよ! あいつは絶対に、普通の神経してないよ!」


危険物質系の匂いがプンプン漂ってくるんだ!


あたしには分かる!


あんなやつ、100ケタくらいのパスワードが必要な金庫に閉じ込めときゃいいのに!


「確かに厄介な相手なようだな。セバスチャンですら、彼の本性を見抜けなかったようだし」


門川君の言葉に、あたしは神妙にうなづいた。


そうなんだよ。あのセバスチャンさんが、全く警戒していなかった。


確か昔、同じ学校に通ってたみたいなこと話してなかったっけ?


成重は絵に描いたような地味男くんだったらしいけど。


・・・まさかその頃から、すでに無害な男を演じていたとか?


誰にも気付かれないように、密かに牙を磨いていたんだろうか。


だとしたらかなり手強い。


うちの一番の知恵者を、ずっと昔から、まんまと欺き続けていたことになるんだ。


やばいね・・・マジで。


敵はこれから、どんな手段で罠を仕掛けてくるつもりだろう。


今回は正直言って、あいつの手の平で見事に転がされた気がする。


次回はちゃんと対抗できるだろうか。


「そう心配することもない。今回の件は、特に色々と複雑な要素が絡んでいただけの話だ」


「そ・・・そうだよね! 今回は特別だったんだよね!」


門川君の言葉に、あたしは自分を奮い立たせるように明るく返した。