今までずっと、子作りマシーンと信子長老が結託していると思っていた。
でも違う。
結託していたのは恐らく、この男と信子長老なんだ。
この男は信子長老の復讐心と、彼女の比類ない能力に目をつけた。
そして自分の野心を叶えるために利用した。
子作りマシーンは、自分が首謀者のつもりでまんまと息子の罠に落ちたんだ。
この男は・・・自分の親兄弟までも犠牲にしたのか!
「そういえば信子長老は、行き方知れずになってしまわれたそうですね?」
首を傾げて、成重が言う。
「ああ、そうだな。常世島の魔の海に転落したようだ」
門川君が表情ひとつ変えず、ケロッと嘘をつく。
信子長老は魔の海を航海中に転落して以来、行方不明。
公式では一応そういう事になっているから。
「私は信子長老とは、常世島の世話にかかわる事で懇意にしていただきました」
「そうか。ならばさぞ君も心配だろう」
「はい。彼女は慈悲深く、未来への希望にあふれた素晴らしい方です」
白々しいその言葉に虫唾が走る。
子作りの事で頭が一杯だったバカじじぃはともかく。
この悪賢い男が、信子長老の真の目的を知らないはずがない。
・・・見越していたんだ。全部。
あたし達と彼女が戦い合うことを。
そしてあわよくば、門川君を亡き者に。
もし信子長老が生き残ったとしても、弱った彼女を片付けるなど簡単。
どっちに転んでも構わない。
そうして、のうのうと高見の見物を決めこんでいたんだ。


