信子長老が送り込んだ常世島の能力者たちは、すぐに島へ帰った。


ここでもひと騒動おきるんじゃないかって心配したんだけど。


意外にも全員、潮が引くように素直に帰っていった。


信子長老も、長さんも、戌亥も、子作りマシーンもみんな死んでしまったから。


島の一大事だって、血相変えて飛ぶように戻っていった。


だから神の一族の能力が失われるという事件は、それ以上大事になることも無く。


話題になることもなく、みんなの頭からすっかり忘れ去られた。


ちょっとだけ世の無情というか、侘しさみたいなものを感じるけど。


でもこれでいいんだよね。


「常世島の人たち、元気かなあ?」


「元気なようだ。浄火君の手紙にそう書いてあった」


今でも表向きは、常世島との交流は蛟一族が担当になってるけど。


実際は海底トンネルを利用して、門川君と浄火は手紙で密かに情報交換し合っている。


「彼の字は汚くて、読み難くてかなわないよ」


門川君はそう言って顔をしかめた。


「あー、浄火って丁寧な字を書くような性格には見えないもんね」


「殴り書きだな。あれで信子長老の娘に文字を教えているというのだから、まったく」


「主さんと三人一緒に住んでるんでしょ?」


「実に心配だ。彼の粗雑さが伝染してしまうかもしれない」


子独楽ちゃんは、新たな島の長となった浄火の元へ引き取られた。


浄火は自分に懐いてくる彼女を、実の妹みたいに可愛がっているらしい。