「み、水。お岩さん、お水もらっていい?」
「ええ。わたくしはちょっと、ハインリッヒちゃんを紹介してきますわ」
「紹介? 誰に?」
「もちろんジュリエッタちゃんたちですわ」
「・・・あ、はい。じゃ、よろしく」
巨大ミミズ連合軍と、古代マンモスのご対面か・・・。
ファンタスティックな図だわー、それ。
見たいような見たくないような、不思議な興味を掻き立てられる。
それはともかく、水、水飲みたい!
あたしは台所にすっ飛んで行った。
土間って言うんだっけ? ここ。
屋根や壁はあるけど床がむき出しの地面で、外から直接靴のまま出入りする場所。
広い空間に釜戸がズラッと並んで、薪がパチパチと燃えている。
モクモクと上がる白い湯気と一緒に香ってくる、白米や煮物の良い香り。
あたしは水桶にヒシャクを突っ込み、ゴクゴクとノドを鳴らして一気飲みした。
うあー、天然水はウマイー。
ぷうっと満足の息を吐き、木造の長イスに腰を掛け足を延ばした。
開け放たれた引き戸から差し込む、明るい陽射しと動物たちの鳴き声。
里の人たちが交わす快活な話し声と、テキパキ働く軽快な気配。
穏やかで平和な日常の息遣いだ。
ここって本当に素晴らしい里だな。しみじみ実感する。
全員良い人たちばかりだし、まさに楽園だね。
戦いから戻ったあたしの心が安らぎで満たされていく。
澄んだ青空を見上げながら疲れた足を撫でているうちに、あたしは睡魔に襲われた。


