即席の海底トンネルを、あたし達は元気に進んで行く。
さすがに表面は荒削りで、足場がゴツゴツしてて歩きにくいんだけど。
でも広さも高さも、立派な出来ばえ!
なんったってハインリッヒでも通れるくらいだもん。
しかもトンネル内を照らす光ゴケまで、ちゃーんと完備されているし。
いやもう、つくづく感服してしまうわな。
なんだろうな、権田原一族に流れる血?
土木作業に燃える本能みたいなものが、一族に脈々と受け継がれているのかしら?
「歩けばそれなりの距離がありますわねぇ」
「片道ならともかく、往復となると時間がかかりますね」
「もっと整備して、馬車で行き来ができるようにしてちょうだい」
「承知いたしました。ジュエル様、お疲れではございませんか?」
「えぇ、大丈夫ですわ」
お岩さんとセバスチャンさんの様子は、さして変わった様子も見えない。
まるきりいつもと変わりないふたりの空気に、あたしは安心した。
みんなで一緒に軽口を叩き合ったりして、延々と先へ進んでいく。
でもさすがに歩き疲れてノドも乾いてきた頃、ようやく権田原の里に着いた。
ふうぅー、着いた着いた!
『トンネルを抜けると、そこは雪国だった』って有名な小説の書き出しがあるけど。
トンネルを抜けると、そこは大きな牛小屋だった。
ノンビリした牛の鳴き声と小鳥のさえずる声が、あぁ、これぞ権田原!
毎度のことながら帰ってきたー! って感じがする。
ホッとするなぁ。暗がりから出てきたばかりで目がチカチカしてるけど。


