神様修行はじめます! 其の四


「できることをやるよ。できないことまで、やるつもりはないさ」


そう言って笑う主さんは、どこまでも主さん節。


カラッと明るい江戸っ子姐さんに、湿っぽさは似合わない。


だってこれから主さんも、自分で選んだ道を進まなければならないから。


「ケモノ道と一緒さね。適当に歩いてりゃそのうち、勝手に道もできるってもんさね」


答えは、ふと気がついて振り返った時に、そこに落ちている。


前に主さんが言った言葉だ。


自分が言った通りのことを、彼女はこれからやろうとしている。


それはやっぱり、寿ぐべき事で。


ならばやっぱり、笑顔が一番ふさわしい。


「では白妙、またのぅ」

「はいよ。じゃあ、また」

「浄火、またね」

「おう、またな」


再会を予感させるこの言葉が、この場に最もふさわしい言葉だ。


その言葉に背中を押され、あたし達は笑顔で洞窟の奥へと進んで行った。


ここで涙は、ふさわしくない。


でもセピア色の洞窟の空気が、どうしても心を物悲しくさせてしまう。


別れって、どんな形でも『哀愁』ってヤツが漂っちゃうもんだから。


だから別れに涙はつきものなんだね。


まるでお寿司の脇に必ずついてくるガリみたい。


ほら、ショウガ薄切りにしてさ、甘酢漬けにしたやつ。


あたしアレ苦手なんだよなぁー。


・・・・・・。


そんな関係ないことで思考を満たして、どうにかこうにか涙をこらえる。


でも涙のヤツもなかなか手ごわい。


ワサビのたっぷり効いたお寿司を食べた時みたいに、鼻がツーンと痛んだ。