「君も指導者となるんだ。上に立つ者がそんな礼儀知らずでは、島の未来も危ぶまれる」
「初対面からオレにガン飛ばしてたお前が言うなよ」
「それは君だろう」
「お前が先にケンカ売ったんだろうが」
「僕はそんな無礼者ではない。君と一緒にしないでくれ」
「それがケンカ売ってるっつーんだよ!」
「はいストップストップー。時間切れですー」
あたしはふたりの間に割り込んだ。
門川君も浄火も、不機嫌な顔をフンッと背け合っている。
このふたりって根っから相性悪いのかな?
でも考えてみれば、門川君とこんな風に言い合える相手って今までいなかった。
彼が望んでも、それはあちら側の常識では許されないことだから。
あちら側の常識が通用しない、こちら側の浄火だからできるんだ。
それは門川君にとって、ものすごく大きくて大切なことのようにあたしは思えた。
もちろん浄火にとっても。
これからふたりは、指導者という大変な道を進まなければならない。
同じ立場で、遠慮なしに本音を言い合える相手がいる。
それはすごく貴重な存在だと思うんだ。
これからきっとお互いが重要になってくると思う。
・・・本人同士は、そんなこと全然望んでなさそうだけど。
「では、行くとするかのぅ。白妙よ、島を任せたぞ」
絹糸は名残惜しそうだった。
絹糸にとって主さんは、あたし達とはまた違う、特別な存在だったろう。
あっという間に儚く消える、人間であるあたし達。
いつも常に誰かの命を見送ってきた絹糸のそばに、変わらずいてくれた存在だから。
その主さんと別れるのは・・・寂しいだろうな。


