「おおい、子独楽! こっち来いよ!」
浄火がお墓の前の子独楽ちゃんに声をかけた。
振り向いた子独楽ちゃんが立ち上がり、素直にパタパタと駆け寄って来る。
そして浄火の袖口をキュッと握りしめた。
あどけないしぐさはとても幼いけれど、実際の年齢は凍雨くんと同じくらいかな?
子独楽ちゃんの記憶は、七歳の頃から失われてしまっているから。
そのギャップを埋めるだけでも大変だろうな。
「子独楽ちゃん、元気でね。また会おうね」
「・・・・・・」
母親にそっくりの大きな目が、無言であたしを見つめた。
昨日母親を失ったばかりの彼女は、当然まだ笑顔を見せてはくれない。
笑顔どころか混乱とショックが大きすぎて、しゃべることすらままならない。
そんな彼女を残していくのは心配なんだけど・・・。
かといって向こうへ連れて行っても、幸せにはなれないだろうし。
それになぜか浄火に対してだけは、とても懐いていた。
浄火の隣にいるときは警戒する様子も全く見せず、安心した表情を見せる。
ひょっとして、浄火に恋した記憶が心の奥に残っているのかもしれない。
「また会いに来てくれるってさ。良かったな子独楽」
浄火が子独楽ちゃんの頭をポンポンと撫でた。
見上げる子独楽ちゃんの表情が穏やかに和らぐ。
やっぱり彼女はこの島で暮らすべきだ。
ここで生まれて、ここで育ったんだもの。
だからきっとここで幸せを見つけるはずだ。
・・・でしょ? 信子長老。


