「白妙よ、よう決意してくれたのぅ」
「ま、しかたないさ。ここで島を見捨てて帰っちゃ、女がすたるからねぇ」
主さんはカラカラと明るく笑った。
「あんた達、そっちにあたしがいなくても、しっかりおやりよ」
「ふむ、任せておけ。・・・さらばじゃ」
「主さん・・・どうか元気でね・・・」
「ちょいと、湿っぽいのはゴメンだって言ってるだろ? その気になりゃいつでも会えるさ」
「さようでございます。トンネルも繋がっていることでございますし」
うん、そうだ。主さんやセバスチャンさんの言う通りだ。
主さんは自前でいくらでも海を渡れるんだし。
トンネルを通れば、誰でも簡単に行き来ができるんだもんね。
海底トンネルの存在は、当分の間はあたし達だけの秘密になるけど。
・・・やっぱりね、いろんな考えを持つ人たちがいるわけで。
無用なトラブルを避けるためにも、すぐには公にはしない方がいい。
閉鎖された土地にいきなり大きな風穴を開ければ、無事では済まない事態になる。
それをあたしは身をもって知ったもん。
「食糧とか、足りない物資はいくらでも権田原が横流しいたしますわ」
お岩さんが笑顔で胸をドンと叩いて、頼もしく請け負った。
・・・ん、わりと元気そうだね。ちょっと安心。
「岩さん、そういった発言は、僕の前では慎んでくれないか?」
渋い顔をする門川君に、お岩さんはどこ吹く風だ。
「あら永久さまったら。これは横領ではありませんわ。人命救助の一環ですわ」
「そーそー。財団法人の救援物資みたいなもんだよね?」
「小娘よ、おまえ、財団法人が何なのか知っておるのか?」
「ん、全然分かんなーい」
ケロッと答えたあたしを見て、みんなが声を上げて笑った。


