「天内君」
浄火と笑い合っていると、みんながゾロゾロ揃ってこっちへ向かってきた。
あ、もう行くのかな?
主さんがあたしの足元を通り過ぎ、スルスルと浄火の元へ進む。
そしてクルリとこっちを振り向いた。
「それじゃ、せいぜい達者でお暮しよ」
「うむ。白妙よ、お主も達者で暮らすがよい」
主さんと絹糸が別れの挨拶を交わし合っている。
主さんはこのまま島へ残ることになった。
実は島民に寄生した異形を、体から排除する方法が見つかったんだ。
あたし達が戦った島民たちの中に、水を操る能力を持った人たちがいた。
彼らの能力で、血液と一緒に異形を体外に出すことが可能だと分かった。
で、後は治癒能力を持つ主さんの出番。
これで島民たちの命は救われる!
一時はどうなることかと思ったけど、治療法が判明して本当に良かった!
これでもう心配ないよ。
主さんが島に残れば、これまで病気や怪我で助からなかった人たちも助かるようになるし。
主さんは島に残って協力することを、あっさり快諾してくれた。
これまでずっと人間との関わりを避けて、沼の底でひっそり生きてきた主さん。
引き受けてくれないかもって思ったけど、今回は思うところがあったらしい。
主さんはなにも言わないけど、長さんの最期の言葉が大きかったと思う。
『お前に、もう少し早く出会いたかった』
あの言葉が、主さんに何かを決意させてくれたんだ。
つまりそれって、長さんが島民の命を守ったってことでもあるよね?
色々あったけど、やっぱりあなたは立派なリーダーだったよ。
ね、長さん。


