「まあ、そんな心配すんなよ。権田原は強い女だからな」
浄火が明るい声でそう言った。
「里緒が暗くなったって、しょうがねえだろ?」
確かに浄火の言う通りだ。
あたしまで一緒に暗くなったら、お岩さんはどうすればいいのか分からない。
せめて、あたしがしっかりと彼女を支えてあげたい。
「まずは権田原の里へ行くんだろ? 里へ帰れば、あいつも元気になるさ」
「うん。きっとそうだね」
あたしはうなづいた。
あちら側へ戻るにしても、堂々と帰るわけにはいかない。
なにしろ門川君は、お屋敷の私室に閉じこもってることになってるわけで。
できるだけコッソリ行動したい。
だから、セバスチャンさんが自力で掘った海底トンネル。
それを利用させてもらうことになった。
海底トンネルで権田原へ行き、そこから、門川邸の中庭へと通じる地下道を利用するわけ。
門川君の氷龍に乗って帰ろうかとも考えたけど、ひとつ問題があった。
マンモスのハインリッヒくん。
今回見事に主人を危機から救ったヒーローを、一緒に里へ連れて行かなきゃならない。
あれを氷龍の背に乗っけて運搬するのは、さすがにちょっと。
想像しただけで笑える展開になりそうなんで、トンネルを利用することになった。
しっかしまあ、日本の里山にマンモスが住むことになるのか。
もう権田原ってなんでもありね。カオスの世界。
そのうちアンモナイトとか三葉虫とかも増えたりして。


