神様修行はじめます! 其の四


「オレの中には、里緒がいたんだな。だから急速にこれほど惹かれたのかもしれない」


瞳の奥の悲しみを隠すように、また浄火の目が緩やかに細められる。


「だから、きっと・・・」


浄火の言葉は、そこで止まった。


・・・・・・。


きっと。だから、きっと。


きっと、この気持ちは薄れていくのだろう。


もう自分の中に、あなたはいないのだから。


時と共にこの想いも、この悲しみも、薄れていくはず。


だから、心配しないでいい。


なにも心配しなくていい。


忘れるから。


この気持ちをちゃんと忘れて、必ず自分は立ち直るから。


だから全然、心配いらない。


・・・・・・。


語られない声が、あたしにそう告げていた。


あたしはやっぱり、何も返すことができず。


どこまでも優しい浄火を前に、懸命に唇の両端をあげて、涙をこらえるしかなかった。


「叶わない恋・・・か」


浄火の視線が動いた。


少し離れた場所に立つ、お岩さんを気遣わしい目で見ている。


浄火が何を考えているのか、当然あたしにも分かった。


その思いはあたしも同じだったから。


結局、信子長老から真相を聞き出すことはできなかった。


いかにも思わせぶりな、古代神話の大蛇の姿を見せられただけで。


果たしてそれが答えなのかも、彼女が死んだ今となってはもう調べる手立てが無い。


お岩さんの恋は、この先どうなってしまうのか。


そのことが、とにかくあたしは心配でならなかった。