いつの間にか、もう日は傾いていた。


紫紺の空に浮かぶ雲が、不思議なほど鮮やかな朱色に染まっている。


合間から覗く黄昏の光が、今日の終わりの名残りを告げていた。


終わった・・・。戦いは終わったんだ。


でも、魔の海は変わらない。


日が昇ろうと、沈もうと。誰かが死のうと、遺されようと。


決して変わらず幻想のように美しく揺らめきながら、人々を誘う。


常世。それは届かぬこの世の果て。


その果ての砂浜に、命尽きた者がいる。


常世を変えるという、決して届かぬ望みに手を伸ばし、願い叶わず死んだ者が。


暗い空と、濃い朱色と、淡い金の光。


揺らめき変わらぬ魔性の海と、それを渡る冷たい風。


砂浜に横たわる体と、泣き濡れる者。


慰める事も叶わない、無力な勝者たち。


あたしはそれを見て聞いて、風にさらされ涙を流す。


流した涙はどこまでも、砂に吸われて消え去った。


どこへ・・・行くのだろう。


これほどたくさん流れた涙は、いったいどこへ届くというのだろう。


・・・・・・。


届く場所など、無い。


ここは常世。果ての島。


たどり着くことなど夢にも叶わぬ・・・


無情の世界なのだから・・・。