神様修行はじめます! 其の四


・・・言えないよ。


そんなかわいそうな彼に、なにを言える?



『あたしが他の男の人のものになっても、あんたは平気なんだ?』


『あたしのことが好きなら、当主の責任よりも何よりも、あたしを最優先するべきでしょ? そうしてよ』



そんな、彼を責めるような、追い詰めるようなこと・・・


とても言えないし、言ってはいけないこと。


門川君の事が、本気で好きだからこそ言えないんだ。



みんな、こんな感情に苦しめられてきたんだ。


あたしのじー様も、永世おばあ様も。


門川君のお父さんとお母さんも。


身に染みて良く分かる。門川君の立場も分かる。


分かるけど。分かるんだけど・・・・・・。



「天内君、何か君、僕に思うところがあるんじゃないのか?」


門川君が突然そう切り出してきた。


あたしの顔を伺うようにジッと見つめている。


複雑なあたしの気持ちを、感じ取ったのかもしれない。



「・・・別に、なにもないよ」


あたしは、そう返事をするのが精一杯。



「そんな風には見えない」


「門川君の気のせいだよ」


「じゃあなぜ、僕を見ない?」


「・・・・・・・・・・・・」


「さっきからずっと君は、僕から目をそらしているじゃないか」


「それは・・・」


「今日から僕としばらく会えなくなるというのに、君は平気なのか?」