そしてあたしは、目が覚めた。


『目が覚めた』っていう意識すらも、最初はおぼろげで。


ぼんやりとした頭は、状況をまるで理解できない。


それでも顔を撫でるように吹く風が、少しずつあたしの脳を覚醒させていった。


「目が覚めたか?」


門川君の声が聞こえた。


ソロソロと視線を動かすと、彼の顔が頭上から覗きこんでいる。


手の下に感じる細かい砂粒の感触。


あたしは砂浜の上に、仰向けに寝そべっていた。


そこで一気に覚醒して、ガバッと上体を起こして叫んだ。


「門川君!? 大丈夫だった!?」


「ああ、無事だ。暴走した君の炎に取り囲まれた時は、一瞬本気で死を覚悟したが」


そ、そうだ。あたし、また力を暴走させちゃったんだ。


この海岸一帯、文字通りの火の海と化していたっけ。


ここから逃げられない彼は、生きた心地もしなかったろう。


うわあ、また彼の命を危険にさらしてしまった。


なんかあたしの行為って、助けるつもりが彼の寿命を縮めているだけな気がする。


「ご、ゴメンね門川君。なにしろもう、ストレスが溜まりまくっていたもんで、つい」


「いや、冗談だよ。炎は一応それなりに制御されていたようだ」


「え? それほんと?」


「ああ。君も少しは成長の兆しが見えているようだな」


そう言う彼の言葉に、あたしは首を傾げた。


へえ? あたし、無意識のうちに攻撃のターゲットを絞っていたのかな?


ぜんっぜん、そんな事をやった意識なんかないけど。


ていうかたぶんそれって、ただの偶然だと思うんだけど。


言えばまた門川君にネチネチ小言を言われるから、言わないけどさ。