神様修行はじめます! 其の四


「天内君」


門川君はあたしの真ん前まで近寄り、立ち止まった。


あたしは顎を引き気味にして彼を見る。


逃げ腰のあたしに対して、彼は真っ直ぐにあたしを見ていた。


その、なんのわだかまりも感じられない視線が、あたしには余計に辛い。



やっぱり門川君は、この状況を何とも思っていないのかな?


あたしが誰かと結ばれても、全く平気なのかな?


・・・・・・悲しい・・・な。



「権田原へ行くそうだね」


「・・・うん。このままだと結婚させられちゃいそうだから」


「そうか。それほど嫌ならば、君の意思を尊重するよ」



門川君は、他にも何かを言いたそうな表情をしてる。


意を決したように口を開きかけたけど・・・


難しい顔をして、また黙り込んでしまった。



不可解な疑問が自分の胸の中にあるけれど、うまく整理できない。


そもそも、疑問自体をよく理解できていない。


・・・そんな印象だった。



小さな頃から、他人とまともに接触することができないまま育った門川君。


人の気持ちどころか、自分の気持ちさえ分からない。



心は未熟で幼くて、今、ようやく成長し始めているのに。


いつも成熟した大人としての責任と行動を、当然のように周りから要求されてしまう。


だから彼は自分の事より、門川の、世界の利益を優先させてしまう。


当主とは、そうあるべきだと強く自分をいさめている。