起き上がる力の無いあたしは、腕の力だけで前へ進もうとした。
水泳のバタフライのように両腕を前に突き出し、死にもの狂いで砂を掻く。
(動け! 動け! あたしの体、動けぇ!)
だけど・・・・・・ムダだった。
自分の体の鉛のような重さに、ただ絶望するだけ。
あたしの体は、ほんの僅かも進まなかった。
それだけの動作で、意識が遠のき目の前が暗くなる。
汗で全身が湿って、もがく体中に砂が貼り付いている。
砂ひと粒分の重さにさえ、弱ったあたしの体は耐えられなかった。
「子独楽・・・ちゃん・・・」
自分のあまりの無力さに、絶望して涙が出る。
なにもできない。なにもできない。あたしは、なにもできない。
なんの罪もないのに、これほどまでに苦しめられ続けた子独楽ちゃんを。
人の記憶を失いながらも、それでもあたしを救おうとしてくれた子独楽ちゃんを。
この襲い掛かる悲劇から、守ることもできないなんて!
(嫌だあぁぁぁーーー!)
泣きながら力無く砂を掻くだけのあたしの耳が、空を切る音を捉えた。
まさか・・・!?
首だけ動かし、後ろを振り返ったあたしはゾッとした。
さらに・・・触手が三本、凄まじいスピードで迫ってくる!
トドメを刺すつもりなの!? あれに襲われたら、もう子独楽ちゃんは・・・!
「嫌あぁぁ! やめてーーー!」
ちっぽけなあたしの叫びは届かず、無情に触手は哀れな贄に襲いかかった。
―― ドス! ドス! ドス!
耳を覆う間もなく、これ以上ない残酷な重々しい音が続けざま響く。
そしてあたしの目は、触手が貫く体を見た。
子独楽ちゃんの・・・
娘の体の上に覆い被さった、信子長老の体を。


