「子独楽ちゃん!」
あたしは、出せる限界の大声を出し、子独楽ちゃんに向かって手を差し伸べた。
そして全力でバンバン砂を叩く。
気付いて! こっち見て子独楽ちゃん!
「だめだよ! その人を殺しちゃ、だめなんだよ!」
信子長老が、子独楽ちゃんに殺されるなんて・・・!
いくらなんでも、そんなのはあんまりだ!
そんなの許されることじゃない! なんとしても、あたしが阻止してみせる!
「その人を放して! 攻撃をやめて!」
形相を変えて必死に訴えるあたしの様子に、子独楽ちゃんがやっと気付いてくれた。
首をブンブン横に振るあたしの姿を、不思議そうな顔で見ている。
「とにかく、その人から離れ・・・ぐぅ!」
無我夢中で叫んだり動いたりしたせいで、また吐き気が襲ってきた。
とても我慢できる状態じゃなくて、背中を震わせながら大量に吐く。
驚いた子独楽ちゃんが、思わず信子長老への締め付けを緩めた。
もはや意識のない長老の体が、人形のようにドサッと崩れ落ちる。
それを見て、あたしはホッとした。
あ、いや、状況的には、とてもホッとできるシーンじゃないんだけど。
でもとりあえず、子独楽ちゃんが攻撃を止めてくれた。
これでなんとか、娘が母親を締め殺すなんて最悪の状況だけは回避された。
安心して一気に脱力したあたしを、子独楽ちゃんは心配そうに見ている。
そして慌てて、スルスルとこっちへ近寄ってきた。
・・・助けてくれるつもりなの?
―― ドスッ!
「・・・・・・!」
あたしの目の前で、子独楽ちゃんの顔と体がビーンッと硬直した。
彼女の横腹から背中にかけて、一本の触手の槍が貫いている。
次の瞬間、緑色の血が触手を染める様にドクッと吹き出した。


