戦う前に、ちゃんと覚悟を決めたはずだったのに。
「小娘!」
「天内君!」
絹糸と門川君の叫び声が、また聞こえる。
催促するようなふたりの声に、あたしは目を閉じたまま唇を噛んだ。
分かってるよ。分かっているんだ。
「小娘!」
「天内君! 聞いているのか!?」
あたしは、自分の役目を果たさなければならない。
門川君を守るという、自分で決めた道を進まなければならない。
あたし自身のちっぽけな感傷なんて、そんなの、戦場ではなんの意味もないんだ。
分かってる! 分かってるんだ!
「小娘!」
「だから、分かってるってば!」
「分かっているなら、さっさと逃げてくれ!」
・・・・・・。
え? 逃げる?
あたしは閉じていた目を開いて、顔を上げた。
「・・・・・・!?」
目の前の光景に頬が引き攣り、息を飲む。
絹糸の雷撃によって、一掃されたはずのイソギンチャクの触手の群れ。
いつの間にかそれが、軒並み元気に復活していた。
砂浜中がまた、延々と続くタコ踊りカーニバル状態!
「こやつらには、再生能力があるのじゃ! 小娘、早うそこから逃げよ!」
言われた通りに逃げようとしたけど、体が動かない。
毒が回って筋肉が痙攣してる。麻痺しているんだ。
声すらもまともに出ずに、悲鳴にならない息を肺から吐き出すばかり。
触手に取り囲まれた状況で、あたしは恐怖に顔を青ざめさせていた。


