神様修行はじめます! 其の四


「それでいきましょう! それで!」


「典雅様、『権田原当主が発病』との旨、伝達をお願いいたします」


「承知したでおじゃる」


「みんな、できるだけ早急にここから去るわよ。今すぐにでも」



にわかに室内が慌ただしくなった。


みんな立ち上がり、パタパタ忙しそうに動き出す。


その姿をキョロキョロと見回しながら、あたしは気持ちの切り替えができずにいた。


あれよという間に話が進んで、ついていけない。


まるで夜逃げのような状況に心苦しくなる。



「小娘よ」


ヒザを抱えたままのあたしに、絹糸が近づいてきた。



「我は権田原について行けぬ。永久をひとりにするわけには、ゆかぬからな」


「・・・・・・うん」


「情けない顔をするでないわ。気をしっかりと持て」


「・・・うん」


「向こうへ着いたら、遥峰(はるみね)の指示に従え。あの男ならきっとお前を守ってくれよう」


「うん」



小さな子どものように言われるままコクコクするあたしを、絹糸はどこか不安げに見つめる。


そして念を押すように、向こうではおとなしくしていろ、と繰り返した。



「なにも案ずるな。全て、うまくいく。しま子よ、小娘を頼むぞ」


「うああぁ~~!」


しま子の力強い返事を聞きながら、あたしはやっぱりコクンとうなづくより他に、なかった。