全く力の入らない手で、それでもあたしは懸命に砂を握りしめる。
こ、この砂、ウツボが接近した瞬間に、投げつけてやる。
あの貧相な目玉の中に突っ込んで、目潰ししてやる!
来るなら来い! ウツボぉぉ・・・!
目にも止まらぬ素早さで、二匹のウツボが門川君の背後に迫る。
あたしは握った拳を、必死になってほんの数センチ持ち上げながらチャンスを待った。
さあ、来い。来てみろ。反撃してやる。
そしたら運良く、門川君じゃなくてあたしに注意が向くかもしれない。
どうかあたしを・・・あたしを狙って! ウツボ!
―― ・・・ゴオォォォッ!
その時、門川君の背後で強烈な突風が巻き起こった。
嵐のように大量の砂が巻き上げられ、目の前が砂のカーテンに閉ざされる。
頭上から雨のように降り注ぐ砂で一瞬、視界を完全に失って、その次の瞬間には・・・。
ウツボの姿が、忽然と消えていた。
・・・へ? な、何が、起こったの?
砂のカーテンの向こうで、何かの固まりが、ぶっ飛んで行ったような気がするけど・・・。
あまりにも一瞬の出来事で、何がなんだか良く分からない。
おいウツボ? あんたら戦闘中に急にどこ行っ・・・
「おわ!? なんだありゃ!?」
素っ頓狂な声を上げた浄火が、目を丸くして空を見上げている。
つられて見上げたあたしも、目を丸くした。
いつの間にあんな所まで移動したのか、遥か上空に、三つ巴で激しく絡み合うウツボがいた。
真っ青に輝く長いふたつの胴体と、もうひとつは・・・
透き通るようにキラキラ光り輝く、氷の龍! 門川君の召喚龍だ!
ウツボ二匹ごと、一瞬の力技で掻っ攫って行ったんだ!
「さてと、この間に手早く解毒を済ませてしまおうか」
背後状況なんか、一瞥もくれず。
門川君はまるきり淡々とした無表情で、平然とつぶやいた。


