―― ゴオォッ! ゴオォォッ!
魔の海が震えた。
海の中から巨大ウツボがもう二匹、天に昇るような勢いで飛び出してきた。
「二匹!? まさか、こいつらも操られているのか!?」
浄火がウツボの姿を見上げながら大声で叫んだ。
信子長老は砂地にガクリと両膝をつき、四つん這いになって大きく肩で息をしている。
立ち上がる事もできず、汗まみれの顔は真っ青になってしまっていた。
いったい、どれほどの量の血液を異形に分け与えたんだろう。
きっと彼女の体も限界に近いはずだけれど、大きな両目はまだ光を失っていなかった。
睨みつけるような鋭い目付きで、震える指先をこちらへ向ける。
指示に忠実に反応したウツボ達が、左右から飛翔するように襲ってきた。
標的はあたしではなく、門川君に狙いを定めている。
当の門川君は、術発動の真っ最中。
慌てふためいている浄火の術は、とてもじゃないけど間に合わない。
瀕死の絹糸は意識不明。
絶体絶命の中、あたしの目は毒に侵され、緑の膜で覆われたように濁っている。
頭の中は、半ば夢の世界のようにボンヤリしていた。
あぁ、門川君が、危な・・・い・・・。
門川君、門川・・・く・・・。
く・・・・・・
・・・く・・・そおぉぉぉ・・・!
あたしは白い輝きの中に横たわりながら、半死半生の状態で歯を食いしばった。
内頬の肉を思い切り噛み、薄れる意識を強引に引っ張り戻す。
血の生ぐさい臭いが口の中に広がるのを感じて、少し目が冴えた。
・・・負けるなあたし! 門川君を、守るんだ!
それがあたしの役目でしょうが! こんな所で、のんきに腐りかけてる場合じゃないっての!


