ヘタをすれば死にかねない、命を代償としたギリギリの賭け。
そんな危険なことまでするなんて・・・。
あたしは彼女の決意の深さを、改めて思い知った。
ウツボが三度目の正直とばかりに、小さな目をギラつかせて襲い掛かってくる。
うわ、また来やがったか! しつこい!
かなりのスピードだけど、さすがに絹糸の方が一枚うわてだった。
冷静にウツボの動きを読み、余裕で攻撃から身をかわす。
あたしを咥えたまま軽やかにジャンプして、そのまま華麗に着地をキメると思った時・・・。
―― ビクン!
いきなり、絹糸の体が空中で硬直した。
(絹糸? どうし・・・)
直後に絹糸はあたしの体ごと、砂地にドサッと落下してしまう。
たいした高さからでは無かったけど、不意の衝撃は大きかった。
あたしは顔をしかめて痛みに耐える。
ぐうぅ~! あ、危うく絹糸の下敷きになっちゃうところだった・・・!
急いで砂まみれの体を起こし、隣に倒れている絹糸の様子を確認した。
美しい毛並みは濡れた砂に汚れ、全身を細かくプルプルと震わせている。
急にどうしたんだろう? こんなに震えて、寒いのかな?
―― ガハッ!
絹糸の口から大量の真っ赤な血が吹き出し、ビチャビチャと砂地に降った。
あたしは目を丸くして絶句する。
な・・・なにこれ! 血!? 血ぃ吐いたの!?
どうして!? 攻撃なんか全然食らっていなかったのに!


