神様修行はじめます! 其の四


ウツボは憎たらしいほど的確に、あたし達がいる地点にダイブしてくる。


あたしの襟を咥えた絹糸が、素早く身を翻した。


攻撃をかわされたウツボは、派手に突っ込んで砂を撒き散らす。


お蔭であたしと絹糸は、また大量に砂を浴びるハメになった。


いでで! こ、今度は目に入った!


それにしたって、いったいどうやってウツボを操っているの!?


説得が効くタイプとも思えないし、どう見てもそんな頭良くなさそうだし!


逡巡しているあたしに向かって、信子長老はしつこく指をさして攻撃の指示を出す。


・・・集中攻撃かい! あたし狙い撃ちか!


そりゃこの中で、一番お気軽に狙えるのはあたしだろうけど!


ムカついて睨みつけたあたしの目に、濃い灰色の着物の袖が見えた。


その袖から、ポタポタと何かがしたたり落ちている。


砂地に落ちた赤いそれは、みるみる吸い込まれていった。


その正体を知ったあたしは驚いて目を見張る。


あれは・・・・・・血だ!


しかも、あんなにたくさん! 着物の色に紛れて気が付かなかった!


でもどうして!? 怪我してるの!?


「うぬ、信子め! 飲ませたか!」


絹糸が叫んだ。


「飲ませたって、何!?」


「自分の血を、ウツボに飲ませたんじゃよ!」


「はあぁぁ!? 血を飲ませたぁ!?」


「異形の水で能力が活性化した血を、ウツボに分け与えて支配しておるのじゃ!」


わ、分け与えて、支配って・・・。


ヤクザの固めの盃か! お前らは!


どうりで信子長老の顔色が真っ白だったわけだ。


緊張で血の気が引いているのかと思ったけど、そうじゃない。


本当に体内に血液が足りていないんだ。