でもそんな気持ちとは裏腹に、どこかホッとしている自分がいる。
いま門川君と顔を合わせていたら、溝が深まりそうな気がして怖い。
一緒にいたら彼を責めてしまうかもしれない。
そんな自分の心を押さえる自信が、今のあたしには無い。
決意・・・したのに。
何があっても門川君のそばから離れず、彼を守り通すって決意してたのに・・・。
情けない。
そんなあたしの複雑な心境をよそに、仲間たちはテキパキと相談を進めている。
「じゃあ、どこへ天内さんをかくまうんですか?」
「新参者の端境一族や氷血の一族では、正直いって力不足でおじゃる」
「となれば、答えはひとつじゃのう」
「さようでございますね。・・・そこでジュエル様」
「なんですの?」
「今すぐ、ご病気になっていただきます」
意外な言葉に、お岩さんが目をパチパチさせた。
「病気? わたくしが?」
「はい。病名は・・・天ぷらソバにあたった、ということにしておきましょう」
お岩さんが、ますます不可解な表情で天ぷらソバの器を眺める。
絹糸が満足そうにうなづいた。
「さすれば正々堂々、今すぐ権田原へ避難できるのぅ」
「はい。門川が食べさせた物が原因で、体調を崩したわけでございますので・・・」
「門川から付き添い人を出すのが筋じゃろうな」
「ジュエル様とお親しい、天内のお嬢様が付き添う形が自然でございます」
「しかも、当主が病で臥せっているとなれば・・・」
「権田原の里に誰かが押しかけて来ても、面会謝絶で通すことが可能でございます」
「おおー! それって完璧ですね!」
凍雨くんがバンザイしながら明るい歓声を上げた。


