「静」と「動」の不意打ちの逆転に、びっくりして心臓が止まりそうになる。
目の前で巨大な青色の胴体が、灰色の空に向かってグンッと伸び上がった。
・・・ウツボ!? コイツ、あのウツボだ!
またあたし達を追いかけてきたのか!
思いもよらない再会に、一瞬ひるんでしまった。
門川君と絹糸が、初めて見る異質な異形に目を見張っている。
「これが・・・!?」
「うぬぅ! なるほど!」
無言のままの信子長老の腕が伸び、スッとあたし達を指さした。
するとそれを合図のように、巨大ウツボが牙を剥いてこっちに飛びかかってくる。
(え!? 命令に従ってるの!?)
門川君と浄火は素早く砂地を蹴り、自力で攻撃を回避した。
ぼうっと突っ立ってるあたしの襟を、絹糸がガプッと咥えて一気に飛び退る。
―― ドスゥッ!
ウツボが巨大な頭を突っ込んだ場所から、大量の砂が噴水みたいに飛び散った。
顔面からもろにドサドサと砂を被ってしまう。
・・・うわー! 砂が口の中に入った! 気持ち悪い!
ま、まさかこのウツボ、信子長老に支配されているの!?
いやでも、いくらこの人の能力がすごくても、ウツボ相手に会話は成立しないでしょ!?
さすがにそれは不可能だって!
―― スッ・・・
信子長老が、再びあたしに向かって指をさす。
するとまたウツボがこっちに向かって襲い掛かってきた。
巨大な口の中に、ギザギザに並んだノコギリみたいな牙が見える。
やっぱり支配されてる! なんで!?
信子長老って、ウツボと友だち!? バイリンガル!?


