神様修行はじめます! 其の四


門川君と絹糸が、悟ったような目で彼女の背中を見つめている。


浄火は視線を落とし、静かに首を横に振った。


そしてあたし達は全員、覚悟を決める。


答えは・・・出てしまった。


この人は信じている。これが自分の正しく生きる道だと、本当に信じている。


そしてあたし達も、自分たちが目指す道を信じている。


見ているものは同じであるはずなのに。


お互いが、普通に信じるべきものが、こんなにもかけ離れてしまった。


引くことは・・・できない。


そうである以上、あたし達はやっぱり、戦わなければならないんだ。


たとえ、それを望んでいないとしても。


そんなあたし達の意思が伝わったのか、彼女は同意するようにゆっくりと振り向いた。


ほつれた髪の毛の束が海風に揺れている。


紙のように白い顔は、緩やかに微笑んでいた。


目を奪われるほど寂しい微笑みの背後で、魔の海の揺らぎが、なぜかピタリと停止する。


バタバタと流れていた風も止み、完全に音が消えた。


静かすぎてキンと耳鳴りがするほどの、不審な静寂が辺りを支配する。


(これは・・・・・・)


否応にも緊迫感が増し、あたしの呼吸が速くなった。


そう、これはきっと嵐の前の静けさ。何かが来る前触れ。


でも、何が来るの? 彼女自身の能力は、言霊で他者の思考を支配することだけ。


それでいったい、どうやってあたし達と戦うつも・・・。


―― ゴオォォッ!


なんの前触れも無く、いきなり海面から何かが飛び出してきた。