「信子ババ、あんたオレに約束してくれたよな? この島を必ず救ってくれるって」


「ああ、約束した」


「これが、その顛末か?」


「・・・・・・・・・・・・」


「これが、あんたの言う『救い』なのか?」


これは全て、この人が画策したこと。


真っ先に浄火に異形の水を飲ませて、戌亥の劣等感を煽った。


予想通り追い詰められた戌亥は暴走する。


罪の意識にさいなまれた祖母は、その手で孫を殺し、そして・・・自決する。


良質な子孫に執着する蛟の長老の耳元に、甘言を囁いた。


『あなたの子を産むのにふさわしい、命と大地に祝福された美しい娘がいる』


自分の本能に逆らえない長老は、タガを外して狂走する。


お岩さんを狙い傷付けようとする者を、セバスチャンさんは決して許さない。


予想通り、彼はお岩さんを守るために・・・。


「ねえ、ババ。楽しかった?」


全部が全部、自分の計画通りに動いてさ。


周りの人たちが、みーんな思い通りに動いてさ。


楽しかった? 快感だった?


そして望み通り、死んで欲しい人が次々と死んでいってさ。


あんたの気持ち、分かるよ。事情は全部知ってるよ。


それでも・・・ううん。だからこそあたしは聞かずにいられないんだ。


聞きたい。あんたの心を、あんたの口から。


「答えてよ、ババ」


彼女は何も答えない。


うなづくことも、首を横に振ることもない。


ただ、ほつれた黒髪を風になびかせ海を眺めるだけだった。