神様修行はじめます! 其の四


―― ・・・ズ・・・


―― ・・・ズズ・・・


―― ・・・ズズズ・・・


小高い丘の向こうから、振動が伝わってくる。


重厚な地響きが着実に、こっちに向かって近づいてくる。


大地の揺れによって巻き起こされる土埃で、丘の向こうが薄っすらと砂煙に覆われ始めた。


(来い! 来い! 来い来い来い!)


大きな希望を込めて見つめる視線の先。その煙幕に、黒い影が映ったと思った瞬間。


―― バオォォォーーーン!


雄叫びを上げた巨大マンモスが、期待通りに砂煙の中から飛び出す姿を見て・・・


あたしは、狂喜した!


(来たあぁーーーーー!!)


お岩さんの親衛隊員は、姿は見えなくてもいつもお岩さんの近くにいる!


やっぱりハインリッヒも、この近くにいたんだ!


お岩さん以外の人間の呼びかけでも、応えてくれるか心配だったけど・・・


あたしの、奇妙な生物に好かれる特異体質が幸いしたんだ!


特異体質に産んでくれて、ありがとうお母さん! 愛してるー!


ハインリッヒは目を三角に尖らせ、地を踏み鳴らし、怒涛の勢いで屋敷に突進する。


あたし以外のこの場の全員、状況に全く反応できずにいた。


恐ろしいほどの巨漢がみるみる接近してくるのを、あんぐり口を開けて見守っている。


あたしは両の拳をグッと握りしめ、高々と天に向かってドンッと突き上げた。


顎が外れるほど大口を開いて、声を限りに、叫ぶ。


「ブっチかませえぇぇーーーーー!!」


―― バギバギバギィィ・・・!


ハインリッヒの小山のような巨体が、全力で屋敷に体当たりをかます。


簡素な作りの木造の平屋は、ブロックが崩れるように、小気味良いほど粉砕した。