―― ・・・ズ・・・
―― ・・・ズズ・・・
―― ・・・ズズズ・・・
小高い丘の向こうから、振動が伝わってくる。
重厚な地響きが着実に、こっちに向かって近づいてくる。
大地の揺れによって巻き起こされる土埃で、丘の向こうが薄っすらと砂煙に覆われ始めた。
(来い! 来い! 来い来い来い!)
大きな希望を込めて見つめる視線の先。その煙幕に、黒い影が映ったと思った瞬間。
―― バオォォォーーーン!
雄叫びを上げた巨大マンモスが、期待通りに砂煙の中から飛び出す姿を見て・・・
あたしは、狂喜した!
(来たあぁーーーーー!!)
お岩さんの親衛隊員は、姿は見えなくてもいつもお岩さんの近くにいる!
やっぱりハインリッヒも、この近くにいたんだ!
お岩さん以外の人間の呼びかけでも、応えてくれるか心配だったけど・・・
あたしの、奇妙な生物に好かれる特異体質が幸いしたんだ!
特異体質に産んでくれて、ありがとうお母さん! 愛してるー!
ハインリッヒは目を三角に尖らせ、地を踏み鳴らし、怒涛の勢いで屋敷に突進する。
あたし以外のこの場の全員、状況に全く反応できずにいた。
恐ろしいほどの巨漢がみるみる接近してくるのを、あんぐり口を開けて見守っている。
あたしは両の拳をグッと握りしめ、高々と天に向かってドンッと突き上げた。
顎が外れるほど大口を開いて、声を限りに、叫ぶ。
「ブっチかませえぇぇーーーーー!!」
―― バギバギバギィィ・・・!
ハインリッヒの小山のような巨体が、全力で屋敷に体当たりをかます。
簡素な作りの木造の平屋は、ブロックが崩れるように、小気味良いほど粉砕した。


