愛する人が自分の名を呼ぶ声に、答えることもできず。
お岩さんは白い両足を思い切りバタつかせる。
その足も、掴まえられて・・・・・・
あぁ、もう、見ていられない!
あたしは頭を抱えてしゃがみ込み、ひたすら泣き叫ぶより無かった。
嫌だ! こんなのは嫌だーー!
どうしてこんな残酷な事が、現実に起こるの!?
絶対に絶対に、間違いなく絶対に、これは許されない行為なのに!
なぜあたしは、それを止めることも出来ないほど無力なの!?
畳の擦れる音を
荒い息遣いを
すすり泣く声を
これからお岩さんに与えられる非道な行為を・・・
塞いだ耳のすき間から聞いているしかないなんて!
これでもあたし、お岩さんの親友なの!?
これでも仲間っていえるの!?
仲間なのに! あたし達は確かに仲間なのに!
仲間な・・・の、に・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・!」
あたしの頭に、まるで天啓のように一条の光が差し込んだ。
まさに、天の啓示。息が止まるほどの衝動に、虚しく泣き喚いていた声もピタリと止む。
考える間もなく、あたしはすかさず飛び上るほどの勢いで立ち上がった。
そして肋骨の限界まで、無我夢中で息を吸い・・・
カッと目を見開き、天を仰ぎ、一世一代の大絶叫を放った。
「ハインリッヒぃぃぃーーーーー!!!」
・・・来おぉぉぉーーーーーい!!
あたし達の新たな仲間のマンモス!
お岩さんを守る親衛隊員ーーーーー!!


