神様修行はじめます! 其の四


「うわあー! うわーーー!」


あたしは泣き叫びながら、結界の膜をむりやりでも引き千切ろうとした。


うわあ! 破れろ! 破れろ破れろー!


指が折れても構わない。この身に代えても、お岩さんを救いたいと心底から願った。


なのに・・・・・・


無力だった。


どれほど全力を込めても、どれほど願いを込めても、あたしの指はほんの5センチも動けない。


涙に濡れるあたしの目の前で、お岩さんの着物のヒモが乱暴に解かれる。


泣き狂うお岩さんの口の中に、丸めたヒモがぐいっと押し込まれた。


「舌を噛み切って死なれては、かなわぬのでな」


「・・・・・・!!」


叫ぶことすら許されなくなったお岩さんが、頭を振って抵抗する。


あたしも一緒に頭を左右に振りながら、わあわあ泣いた。


なんで・・・・・・


なんでこんな残酷なことができるの!?


なんでなのよーーーーー!?


バチバチと細い閃光が走る。


門川君が印を組み、必死に破術を発動しようとしていた。


絹糸も凄まじい形相で、膜の中で強引に変化しようとしている。


浄火は血管が切れるんじゃないかと思うほど真っ赤な顔で、膜に頭から突っ込んでいる。


なんとしてもお岩さんを救おうとする、あたし達の目の前で・・・


お岩さんの白い一重の着物が肌けられ、白い肌が露わになった。


「岩あぁぁぁーーーーー!!」


セバスチャンさんが咆哮する。


喚き立てる彼の顔は、振り乱す黒髪に覆われて見えない。


でもそのアゴの先から、透明な雫がポタポタと流れ落ちていった。