「うわあー! うわーーー!」
あたしは泣き叫びながら、結界の膜をむりやりでも引き千切ろうとした。
うわあ! 破れろ! 破れろ破れろー!
指が折れても構わない。この身に代えても、お岩さんを救いたいと心底から願った。
なのに・・・・・・
無力だった。
どれほど全力を込めても、どれほど願いを込めても、あたしの指はほんの5センチも動けない。
涙に濡れるあたしの目の前で、お岩さんの着物のヒモが乱暴に解かれる。
泣き狂うお岩さんの口の中に、丸めたヒモがぐいっと押し込まれた。
「舌を噛み切って死なれては、かなわぬのでな」
「・・・・・・!!」
叫ぶことすら許されなくなったお岩さんが、頭を振って抵抗する。
あたしも一緒に頭を左右に振りながら、わあわあ泣いた。
なんで・・・・・・
なんでこんな残酷なことができるの!?
なんでなのよーーーーー!?
バチバチと細い閃光が走る。
門川君が印を組み、必死に破術を発動しようとしていた。
絹糸も凄まじい形相で、膜の中で強引に変化しようとしている。
浄火は血管が切れるんじゃないかと思うほど真っ赤な顔で、膜に頭から突っ込んでいる。
なんとしてもお岩さんを救おうとする、あたし達の目の前で・・・
お岩さんの白い一重の着物が肌けられ、白い肌が露わになった。
「岩あぁぁぁーーーーー!!」
セバスチャンさんが咆哮する。
喚き立てる彼の顔は、振り乱す黒髪に覆われて見えない。
でもそのアゴの先から、透明な雫がポタポタと流れ落ちていった。


