「下りるぞ! しっかりつかまれ!」
その言葉と同時に絹糸は、すごい勢いで一気に急降下する。
飛行機で急降下したみたいに耳の奥がキンとなって、内臓がゾワッと浮き上がった。
「痛ててててーー!」
また浄火が堪らず悲鳴を上げる。浄火、そういう時はツバ飲み込んでツバ!
「ジュエル様!?」
勢いの強い風に顔をしかめるあたしの後ろで、セパスチャンさんが大声を上げた。
え!? お岩さん!? どこ!? どこどこどこ・・・
「・・・・・・!」
視界の下に、お岩さん発見! 良かった無事だ!
喜んだのもつかの間、彼女の恰好を見たあたしは目を丸くする。
お岩さんは、真新しい真っ白な単衣の着物を着ていた。
あの恰好って・・・
時代劇で見る、新婚初夜の新妻が、いざこれから・・・って時に来てる着物じゃんか!
なんなのよ、あれは!?
最悪の恰好をしたお岩さんは、廊下の柱に両腕で必死にしがみ付き、何ごとか叫んでいる。
その彼女の胴に手を回し、力任せに柱から引き剥がそうとしているのは子作りマシーンだ。
ふたりのすぐ後ろ、開け放たれた和室の中には、布団が一組敷かれている。
ふたつ並んだ枕が見えて、あたしの頭からスッと血の気が引いていき・・・
次の瞬間、大川の氾濫みたいにドオォッと沸騰した血が大逆流した。
あ・・・あのじじぃーー!
今まさにこれから、子作りしようとしてんのか!?
「嫌あぁぁ! 遥峰助けて! 遥峰えぇぇ!」
「ええい! いい加減に観念せんか! なんとしぶとい娘じゃ!」