そしてこっちを振り返る。


「待たせたな。行こうぜ、みんな」


「・・・あたしゃ、ここに残るとするよ」


主さんの静かな声にあたしはハッとした。


・・・そんな。主さん、また姿を消してしまうつもりなの?


ひとりぼっちで、沼の底で泣くつもりなの?


「ダメだよ主さん! 一緒に行こうよ!」


「いや、あたしゃここに残るよ」


「主さんを置いて行けないよ! 絶対に一緒に・・・!」


「勘違いしないどくれ。あたしが残らなきゃ、誰が赤鬼の治療をするんだい?」


「へ? あ・・・」


村人たちからの攻撃を受けて、引っくり返って目を回しているしま子。


そ、そうだよ! ぜひともしま子を治療してもらわなきゃ!


でも回復するまでノンビリ待っている余裕はない。


「村人たちにも、ケガ人がいるようだしね。全員あたしに任せな」


「お、お願いします主さん! しま子をよろしくね!」


「マロも、ここに残った方が良さそうにおじゃりまする」


グッタリした顔をして、マロさんが手をあげた。


「情けないことに、限界におじゃりまする。マロが同行しても足手まといになりまする」


「・・・承知した。ではふたり共、この場は頼んだ」


門川君に向かって、主さんとマロさんがうなづいた。


「では皆、我の背中に乗れ」


絹糸に言われ、あたし達は急いで絹糸の背にまたがる。


待っててお岩さん! 今すぐ助けに行くよ!


「・・・飛ばすぞ!」


叫んだ絹糸の体が宙に浮く。


言葉通りに空を駆けながら、あたし達は村を飛び出した。