「浄火君」
門川君が、悲嘆にくれる浄火に向かって話しかける。
「このような事態になり、悲しみも如何ばかりかと察する。ただ・・・」
「ジュエル様が、いまだ囚われの身にございます」
セバスチャンさんが言葉を続けた。
「長様が亡き今、おすがりできるのは、あなた様だけでございます」
「どうか僕達に力を貸して欲しい」
背中を大きく波打たせ、ひたすら泣き続けるばかりの浄火に門川君は深々と頭を下げた。
「なにとぞ、お願い申し上げる。常世島の新たな長殿よ・・・」
浄火のしゃくり上げる声が、ひくりと止まった。
『常世島の新たな長』
「・・・・・・・・・・・・」
グツグツとノドを鳴らし、浄火は懸命に涙をこらえている。
村人達が、息を詰めてそんな浄火を見守っていた。
目の前の惨劇により、指導者を同時にふたりも失ってしまって、みんなひどい不安に陥っている。
そうだ。長さんも戌亥もいない。
この島の民を率いていくのは、もう浄火しかいないんだ。
未曽有の危機に見舞われた島を、島民の全てを、たった今から守っていかなければならない。
泣いてはいられない。
それが、自分の生きる形なのだ。
浄火はスクッと立ち上がり、ゴシゴシと腕で顔を強く拭った。
振り返り、門川君に向かって力強くうなづく。
村人達に向かい、意志の強い彼本来の顔になってハッキリと言い切った。
「任せろ! オレが絶対この島を、そしてみんなを守ってやるからな!」


