門川君と主さんが、ふたりの元へと大急ぎで駆けつけた。
「あんた、いったい何やってんだい!? コイツはあんたの孫だろ!?」
「長殿、そこを退いてくれ。まだ間に合うかもしれない」
戌亥の背に覆い被さり泣きながら、長さんは首を横に振って拒絶する。
血を吸って真っ赤になった服をギュッと握りしめながら、答えた。
「もういい。もはや、これまでだ」
「なに言ってんだい! いいからそこをお退き!」
「これしか道は無かったのだ。いや・・・私が、この子の他の道を断ってしまった」
自分が殺した孫の骸を掻き抱く様にして、長さんは泣き崩れている。
嗚咽にまみれた声が、悲しく訴えた。
全て私のせいなのだ。
私が、この島の長だったから。
長の孫である戌亥が、自分の立場に苦しんでいる事は知っていた。
この子は幼い頃から弱くて、とても脆い心の持ち主だったから。
だけどそれを知りながら、私は何もしてやらなかった。
やれなかった。
私は、長だから。
私情を交える事は絶対に許されない。
そんなことをすれば、島は滅びてしまう。
『なぜ?』 と幾度も袖に追いすがる戌亥の手を振り払い、沈黙を守り続けるしかなかった。
・・・なぜと問われて・・・
何と答える?
『お前には、その能力も器もないからだ』 と、この口で告げろと?
だから私は、何もできなかった。
この子の心が蝕まれ、壊れていくのをこの目で見ながら。
「何もしないで背を向けて、この子を救いようのない場所まで追いつめてしまった・・・」


