なぜ、自分には無いのだろう?


あいつは確かに持っているのに。


どうしてこの手の中は、こんなにも空虚なんだろう?


どうして!? どうして!? どうして!?


必死に目を凝らして探しても


掻き回しても、ひっくり返そうとも


掘り下げるだけ掘り下げても


なにも、無い。


見つけるのは、カラッポでちっぽけな自分自身だけだった。


そして、痛いほど思い知るんだ。


自分は『持たざる者』なのだと。


目蓋が腫れるほど毎晩、泣いて、泣いて、泣き続けて。


血を吐くほどに渇望しても


祈るほどに切望しても・・・


望むものは全て彼の手の中に有り、自分には絶対に手に入らないのだと。



「気付かなかったろ? 知らなかったろ?」


「戌亥・・・」


「そうだ。分からないんだ。持てる者には分からない」


戌亥はスッと、人さし指で浄火を指した。


「持てる者に、持たざる者の気持ちなど、未来永劫理解できないんだ」


―― ブオォォォッ!


視界一面が、白色に染まった。


ものすごい量の真っ白な羽毛が、まるで吹雪のように空に散る。


それらが一斉に、あたし達に襲い掛かってきた。