(・・・・・・!?)


浄火が涙に濡れた顔をバッと上げた。


あたし達も驚いて炎を凝視する。


これ、戌亥の声だ! なんで!?


有り得ない! 滅火の炎に包まれながら、こんなに平然としていられるなんて!


目の前で滅火の炎がスゥッと掻き消えていく。


炎の中から見えた、あまりに場違いな物にあたしは目を見張った。


・・・・・・卵!?


真っ白な羽毛に完全に覆われた、2メートルの大きさはあるだろう卵。


これ、この古代ヘビの卵なの!? 茹で卵になっちゃうよ!


―― ピシ・・・ピシ、ピシ・・・


卵がヒビ割れ、ボロボロと細かい殻が崩れ落ちていく。


その中から、ヤケドひとつ傷ひとつ無い戌亥が泰然とした様子で現れた。


「な・・・・・・!?」


驚いて声も出ないあたしの横で、セバスチャンさんが呟く。


「ケツァルコアトル。それは慈悲と癒しと、授与の神」


慈悲。癒し。授与。


母のように、全ての苦痛からの守護を与える慈悲の神。


「全てを滅する天内の炎ですら、あのヘビには効果がないってこと!?」


「防御という一点においては、典雅様の結界術に勝るとも劣らないでしょう」


―― ワアァァァ・・・・・・・


村人たちが派手な歓声を上げた。


勝利を確信したような喝采に包まれ、戌亥はまさに、神のように超然と立っていた。