見た瞬間は鳥かと思うほど、全身が羽毛のようなもので覆われている。
でも違う。これが鳥であるはずがない。
だってこの頭。そして全長十メートルはゆうに超える、長いあの体躯。
これは・・・・・・ヘビだ!!
「見ろ! これがオレの真の力だあぁぁ!」
細い両目を極限まで見開き、戌亥が誇らしげに高笑いをした。
その声を聞きながらあたしは茫然としてしまう。
龍が立つかのようにそびえる、羽毛の生えた巨大なヘビ?
「ケツァルコアトル・・・!?」
セバスチャンさんがヘビを見上げながら叫んだ。
驚愕とも、苦悩とも言える複雑な声と表情。
彼が叫んだその名前に、あたしの記憶が蘇る。
その名は確か・・・古代メキシコの神話に登場するヘビだ!
敵対していた神に呪いをかけられ、そのせいで自分の妹と深い関係を持ってしまい・・・
楽園を追われてしまった。
そう。自分の、妹と。
セバスチャンさんは、ギリギリと強く唇を噛みしめる。
過ちを犯した古代の神の姿を、青い顔でじっと睨んでいた。
この符合は偶然の一致?
・・・いや、違う。そうであるはずがない。
これはきっと、因業ババが張り巡らした通りの筋書きなんだ。
お岩さんとセバスチャンさんに、『お前達は古代の伝説のようだ』と告げているの?


