勝利に酔った、いびつに歪んだ笑い声。
ただ力に目覚めただけでは、異形のモノと戦えるばすもないのに。
彼らはうっぷんが晴れる事ばかりに目がいって、先の事がまるで見えていない。
あたし達も島民達も、見えている現実は同じはずなのに。
『人は同じものを見ていながら、まるで違うものを見ようとする』
ああ・・・・・・。
まさにその通りだ。
人は誰しも自分が望むとおりの理屈を探し出し、強引に自分の望みを現実に当てはめる。
・・・誰にも彼らを責められない。
それに責めたところで、彼らの中の自分の『正しさ』は決して揺るがない。
歯噛みするあたしの横で、それでも浄火は諦めずに説得を試みる。
「いい加減にしろよお前ら! そんな簡単にいくわけないだろが!」
「試してみるか?」
戌亥の細い目が、キラリと光った。
体全体を覆う異様な気の力が、急激に増幅していく。
それに呼応するように地面の下の方から、何かが蠢き、浮上してくる感覚がした。
足元から伝わるゾワゾワとした感覚に、あたしは思わず後ずさる。
戌亥が、何かを呼び出している?
・・・・・・来る。
来る!
力が、すごい勢いでどんどん近づいて来る!
何かが今、地中を通って・・・・・・!
(・・・来た!!?)
足元に横一直線のヒビが走り、派手な音をたてて地面が割れた。
割れた穴から長身をうねらせて飛び出した姿に、あたしは目を見張る。
それは、息を飲むほど異様な姿だった。


