戌亥の言葉に、村人たちがこぞって同意する。
「長! よくもこの水の存在を、今までずっと隠し続けていたな!?」
「そのうえ島を裏切って、よそ者達の味方をするなんて!」
「あんたはもう長じゃねえ! この島の長は、オレ達を救ってくれた戌亥さまだ!」
「・・・なに言ってんのさ! いい加減にしてよ!」
あたしは我慢しきれず叫び返してしまった。
因業ババとパッツン金太郎が何を言ったのか、知らないけどね!
「あなた達、その水を飲んだら最後、どんな結果になるか分かっているの!?」
同族の能力を奪い続ける水。
全ての神の一族の力は急速に衰える。
異形が世に蔓延して、世界は、人は崩壊してしまうんだ!
「そんな水だと知ってて飲ませた相手を、んなーにが『戌亥さま』だっつの!」
「里緒の言う通りだ。水を飲んだ者は、仲間の力を奪い続ける事になる」
浄火が切々と訴えた。
「自分の仲間を・・・大切に想う人を、傷つけてしまう事になってしまうんだ」
「はあ? 仲間って誰だよ? オレ達の仲間は島民だけだぜぇ?」
腕組みをした戌亥が、浄火をバカにするように言った。
「島以外の人間がどうなろうが、知った事かよ」
「戌亥さまの言う通りだ! 能力を持つオレ達が、これからは生き延びる!」
「そうだそうだ! オレ達が勝利者だ! よそ者の事なんざ知るか!」
ハハハハ・・・・・・。
島民たちの間に乾いた笑い声が起こった。


