村人たちは厳しい眼つきで、こっちを睨んだまま微動だにしなかった。
そして声を揃えて叫び出す。
「オレ達から、あの水を奪い取ろうとしたってそうはいかないぞ!」
「そうだ! やっとのことで、神の一族の力を手に入れる事ができたんだ!」
「この島が救われる日が来た! この村以外の島民にも水を飲ませるんだ!」
「ち、ちょっと待てよみんな! 話を聞けって!」
浄火が両腕を大きく振った。
「まさかお前ら全員、あの水を飲んじまったのか!?」
「ああ、もちろん全員、信子さまと戌亥さまに飲ませていただいたとも」
浄火の顔色が目に見えて変わった。
やっぱり、この異様な気配はそのせいだったんだ。
水によって強引に目覚めさせられた力。
制御しきれない能力なのに、誰も抑えようともしていない。
たぶん抑え方も分かっていないんだろう。
・・・まずい。コントロール不能なエネルギーなんて、必ず暴走する。
「だめだ! その水をこれ以上この島へ広げちゃだめなんだ!」
「浄火の言う通りだ。その水は本来、人が扱うべき物ではないのだ」
長さんが静かに、でも厳しい声で村人達に向かって宣言した。
「その水を飲むことも、飲んだ者がこの島から出る事も、長として禁ずる」
「残念だがな、あんたはもう長じゃないんだよ。おばあ様」
戌亥がニンマリと笑った。
「裏切り者のあんたに、長の資格は無い。もうこの島の長はオレなんだ」


