あっさりとセバスチャンさんは、村人たちをそのまま地面に下ろしてくれた。
あたしはホッと胸を撫で下ろす。
よ、良かった。あと一瞬遅かったら・・・
セバスチャンさんが、ガチで村人たちを殺戮するシーンを見るハメになってた。
この人、お岩さんを助け出す為なら、自分の手を汚すなんて全然平気だ。
門川君がいてくれて本当に良かった。
「それでは皆、先を急ぐぞ」
門川君の声を合図に、あたし達はまた絹糸としま子に抱えられながら進み始める。
伸びてる門番たちを尻目に、村の中へ突入したあたし達はすぐに異変に気が付いた。
人の気配が無い。
大人も、子どもも、誰ひとり姿が見えない。
代わりに異様な気配が村全体を覆っていた。
なんだろう? こんな不気味な気配は初めて感じる。
まるで濃縮された複数のエネルギーが、不規則に混じり合っているような・・・。
「・・・・・・!?」
絹糸としま子の足が、同時に止まった。
村の出口の前に、村人たちがズラリと勢ぞろいしてこっちを見ている。
男達はもちろん、女も子どもも全員総出で、人間の壁を作るみたいに。
村を覆う異様な気配は、この村人たちから濃密に発散されていた。
そしてその先頭に・・・
「戌亥!」
「よう浄火、生きていたのか。お前は本当に悪運の強いヤツだな」
戌亥がせせら笑いながら仁王立ちしていた。
こいつ、やっぱりこの村へ来ていたんだ!
「戌亥、これは何のつもりだ!? 退け! みんなを下がらせろ!」
「みんな、浄火がどけろと言ってるぞ? どうする?」


