今までの敵意ばかりが強かった視線とは、どこか違う浄火の目。
なんだか改まった姿勢で、セバスチャンさんや門川君を見比べている。
神の一族の能力を続けざまに目の当たりにして、さすがに感じるものがあったのかもしれない。
「急ぐぞ、みんな」
門川君の声に、全員が走り出す。
すぐに出口の明かりが見えてきて、あたし達は洞窟の外へと一斉に飛び出した。
「ここからどっちへ行くの!?」
「近くに村があるんだ。そこを通るのが一番近い。行こう」
「案内せい。皆、我の背に乗れ」
絹糸がみんなを背中に乗せ、走り出す。
でも全員乗るのはさすがに無理で、あたしと門川君はしま子が抱えて走ってくれた。
絹糸の背に揺られながら、浄火が絹糸に質問する。
「ところであんた、いったい何者なんだ?」
「なんじゃ、分からぬのか? 我じゃよ」
「だから、誰だよ?」
「浄火、それ絹糸なんだよ」
「はあぁ!? お前あの、じ様くせぇ猫が化けた姿なのか!?」
「じ様くさいとは何じゃ! これが我本来の姿じゃわい!」
浄火は感心したような呆れたような顔で、絹糸や門川君たちを交互に眺めていた。
絹糸としま子は、足場の悪い道を物ともせず悠々と駆け抜ける。
お蔭であっという間に前方に村が見えてきた。
「あの村を通り抜けてくれ!」
「承知! しま子よ、我から遅れるでないぞ!」
「うがあぁ!」


