神様修行はじめます! 其の四


その場の空気が一気に凍り付く。


セバスチャンさんがサッと顔色を変え、絶句した。


言葉を失った彼に代わって、あたしは大声で叫ぶ。


「つ、連れ去られたって、なんで!? 誰が、どうしてお岩さんを!?」


―― シャアァァァーーー!


「・・・・・・!」


ヘビの頭のひとつが、こっちを目掛けて横から突っ込んできた。


裂けるのかと思うほど大きなひし形の口が、牙を剥く。


・・・しまった油断した! 丸飲みされるー!


あたしは両目をギュッと閉じて身を固くした。


―― キ・・・ン!


鋭い音と共に、目の前に半透明な結界の壁が現れた。


その壁にヘビが接触した途端、バチィッと盛大な火花が四方に飛び散る。


ヘビの頭は反り返り、もんどり打って地面に落ちた。


マロさんが結界術で、あたし達をヘビの攻撃から守りつつ叫び返してくる。


「蛟(みずち)一族の当主でおじゃる! あの老人がさらって行ったのでおじゃるー!」


・・・・・・!!


子作りマシーンかーーー!!


あんのジジィー! どこまで子作りの執念に飢えた年寄りなの!?


「しかも、どうやってここまで来られたの!? 船も無いのに!」


怒鳴るあたしの横で、セバスチャンさんはすでに冷静さを取り戻していた。


「蛟一族本来の能力があれば、船に頼らずとも海は超えられます」


じゃ、なにか!?


お岩さんに自分の子どもを産ませたい一念で、わざわざ自力で海まで超えてきたってこと!?


気持ち悪すぎだろそれ!