その場の空気が一気に凍り付く。


セバスチャンさんがサッと顔色を変え、絶句した。


言葉を失った彼に代わって、あたしは大声で叫ぶ。


「つ、連れ去られたって、なんで!? 誰が、どうしてお岩さんを!?」


―― シャアァァァーーー!


「・・・・・・!」


ヘビの頭のひとつが、こっちを目掛けて横から突っ込んできた。


裂けるのかと思うほど大きなひし形の口が、牙を剥く。


・・・しまった油断した! 丸飲みされるー!


あたしは両目をギュッと閉じて身を固くした。


―― キ・・・ン!


鋭い音と共に、目の前に半透明な結界の壁が現れた。


その壁にヘビが接触した途端、バチィッと盛大な火花が四方に飛び散る。


ヘビの頭は反り返り、もんどり打って地面に落ちた。


マロさんが結界術で、あたし達をヘビの攻撃から守りつつ叫び返してくる。


「蛟(みずち)一族の当主でおじゃる! あの老人がさらって行ったのでおじゃるー!」


・・・・・・!!


子作りマシーンかーーー!!


あんのジジィー! どこまで子作りの執念に飢えた年寄りなの!?


「しかも、どうやってここまで来られたの!? 船も無いのに!」


怒鳴るあたしの横で、セバスチャンさんはすでに冷静さを取り戻していた。


「蛟一族本来の能力があれば、船に頼らずとも海は超えられます」


じゃ、なにか!?


お岩さんに自分の子どもを産ませたい一念で、わざわざ自力で海まで超えてきたってこと!?


気持ち悪すぎだろそれ!