あたしはとにかく、目の前の存在を理解するので精一杯だった。


いや、あれが何であるかは、さすがにあたしにも一応分かる。


ただ、どうしても信じられないの。自分が見ているこの光景が。


自分の頭がどうかしちゃったんじゃないのか? とさえ思う。


だって・・・だって・・・



目の前で八岐大蛇(ヤマタノオロチ)が大暴れしてたら、普通は自分の頭を疑うでしょ!?



「なんなの!? これーーー!?」


でけえぇぇー! デカさが電車並みのヘビって、なにそれ!?


しかも、八つの頭と八つの尾!


長くてグニャグニャ一杯ありすぎだから、正確に数えきれないけど!


それが洞窟の中でところ狭しと、それぞれ暴れまくってる!


「永久様ーーー!」


ヘビが暴れる音に紛れて、人の声が聞こえた。


これ、マロさんの声!? そうだ、みんなはどこに!?


洞窟の壁際に、結界術に包まれたマロさんと長さんの姿を見つけた。


ヘビの頭のひとつが、巨大なキバで術を噛み砕こうと何度も襲い掛かっている。


「マ、マロさんーー!」


「麻呂は大丈夫におじゃりまする! ですが・・・!」


こっちに向かって叫ぶマロさんの言葉に、あたしは血の気が引いた。


「お岩殿が・・・連れ去られてしまったでおじゃる!」