やべえよこれ。マジで怒ってるよ、この人。
不自然極まりないほどニコニコしてるセバスチャンさん。
その極上の微笑みに、あたしは背中にゾーッと寒気が走った。
この人だけは、何があっても敵に回さないようにって肝に銘じていたのに。
一番怒らせちゃダメな人、怒らせちゃったよぉぉぉ!
と、とにかく、彼の怒りの矛先を逸らさなきゃ!
「あの、あのセバスチャンさん! い、いつ島へ来たんですか!?」
「たった今でございます」
「ど、どーやって!?」
「地面を掘りました」
「・・・・・・はい?」
「ご存知の通り、この島は空も海も通行不能でございますから」
権田原に宝船は無し。召喚可能な龍も無し。
で、どうしたか? というと・・・
「ならば地下から攻めるほか無しと判断しまして。自力で海底にトンネルを掘って参りました」
じ、自前で海底トンネル作成しちゃったのぉ!?
さすがは土の民、権田原最凶の男!
「どうやって掘ったの!? しかもこんな短時間で!」
「もちろん、ツタで」
どんだけ強烈なツタよそれ! 超大型の掘削機器か!
セバスチャンさんのツタって、岩盤貫通するほどの威力があるわけ!?
もはやこの人って最終兵器だよ!
「天内のお嬢様にお聞きしたい事は、山ほどございますが・・・」
柔らかく細められた目の奥に、日本刀顔負けの威圧感。
それを上回るほど底冷えする声で、セバスチャンさんが言った。
「さて・・・ジュエル様は、どちらにおいででしょうか?」


